不動産業界はさまざまな業界の慣習にとらわれ、デジタル未開分野最後の巨大産業といわれている。しかし、2022年5月の宅地建物取引業法の改正を契機に不動産業界にテクノロジーの波が押し寄せており、「不動産テック」が導入されることで、不動産業界が大きく変わろうとしている。
福岡の不動産業界の現状をみると地方都市であることから新しい技術の導入が遅れがちであるが、「天神ビッグバン」などの都心での大規模な再開発により全国的にみても不動産市場が活況で、これから始まる都市の発展に伴う「成長痛」といわれる空室への対策はもちろん、市場の変化への対応を含めた新規事業にかかる人的リソースの確保など、不動産テックの導入が大きなカギとなりそうだ。
福岡唯一の不動産テック展示会開催
2024年9月27日(金)に福岡市天神1丁目のエルガーラホール8F大ホールで開催される第3回「不動産テック&sソリューション in 天神ビッグバン」は、福岡唯一の不動産テックの展示会だ。
不動産業界のデジタル製品・サービスを大きく2つに分けると不動産事業者に向けてICTツールを提供する「サポーター型」とエンドユーザーに向けてサービスを提供する「プレイヤー型」があるが、日本においてはサポーター型が「不動産テック」にあたり、プレイヤー型は「プロップテック」と区別されることが多い(欧米などでは、基本的に同義)。
今回の展示会は、不動産業界に特化したテクノロジーの見本市であり、不動産業者に向けた業務効率化などの「不動産テック」に加え、空室対策などを含めた不動産活用などの不動産事業におけるソリューションも紹介する。
不動産業界にデジタル化の機運
デジタル未開分野最後の巨大産業といわれている不動産業界に今、テクノロジーの波が押し寄せている。
不動産ビジネスは日本有数の巨大産業だが、小規模経営者がほとんどという特殊な産業構造があるほか、従業者の半数が60歳以上を占めるなど、高齢化が進んでいる。また、紙での物件情報の管理、対面や電話での顧客とのやり取りなど、紙とハンコ、ファックスや電話を使ったアナログな業務方法が主流で、デジタル技術を用いた業務効率化がなかなか進まなかった。物件情報ポータルやメディアなど、デジタル化が進んでいるカテゴリーもあるが、ITCへのリテラシーは低いままというのが課題となっていた。
こうした閉塞した状況を打破するため、業界や関係官庁がデジタル技術の導入推進に注力しはじめ、不動産テック導入の機運が広がっている。コロナ禍でのマーケットの変化もあるが大きな変化は、関係法令の改正だ。
現在、不動産業界のデジタル化のハードルになっていた関係法令に関して改正や見直しが進んでいるが、その中でも一番大きかったのが2022年5月18日の宅地建物取引業法(宅建業法)の改正による紙とハンコからの解放だろう。
宅建業法は、不動産取引の公平性を確保し、業界の健全性と個人の利益を守るための法律であり、契約時のルールは厳格そのもので、契約内容が記された書面は紙で交付し、書類には宅地建物取引士による押印や記名が必須となっていた。それが宅建業法の改正で、「宅地建物取引士による押印義務の廃止」「一部書式の電磁交付が可能となる」となり、オンライン上で契約を取り交わせるようになった。
顧客管理などの効率化につがるのはもちろんだが、なにより紙とハンコから解放されたことで、業界全体にデジタル化の機運が広がり始めた。逆に言えば、不動産業界において業務のデジタル化を進めるのは、これからでも遅くないということだ。
不動産テックで何が変わるのか
「不動産テック」とは、インターネットやAIなどの最先端テクノロジーを駆使することで、不動産業界が長年抱えていた課題を解決し、従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのことだ。
一方、昨今よく耳にするDXは、企業がAIやIoTなどのさまざまなデジタル技術やビッグデータを活用することで、業務の改善に加え、新たなビジネスモデルやサービスを創出しようというもので、不動産テックは不動産DXを推進するための仕組みやサービスのことであり、DX推進活動の一部に含まれる。
不動産業界で不動産テックが進むことによって、期待できる変化としては「物件情報の一元管理による情報の見える化」「システム化による業務の効率化」「AIやIoTの活用による生産性の向上」「セキュリティ強化による情報漏えいリスクの削減」などが挙げられる。
これらは人材不足、人手不足、長時間労働による高い離職率など、数多くの課題を抱え、デジタル化が進まない不動産業界のビジネススタイルを根本から変え、課題を解決する。テクノロジーの活用により業務効率化、生産性向上、人材不足解消を実現するために、不動産業界が今抱えている課題を見つめ直し、働き方改革に本気で取り組むことができるのだ。
また、近年流行したコロナの影響によってさまざまな付加価値をもつ不動産サービスが生まれているが、テクノロジーの発展により、今までは不可能だったことや、想像もしなかった分野で不動産サービスを提供できる可能性がある。
社会の変化とともに移り変わる需要をいち早く見つけ出し、最先端のテクノロジーを活用したさまざまな新しいサービスを創出・展開していくことが、これからの不動産業界でより重要になるのを疑問に思う業界関係者はいないだろう。
福岡で今、不動産テックを導入するべき理由
福岡は地方都市であるがゆえ、新たな技術の導入が東京などに比べ、2年ほど遅れる傾向がある。不動産業界に押し寄せるデジタル化を契機にテクノロジーの導入を検討するには、先行者利益を獲得できるという意味でも今が絶好のタイミングといえるかもしれない。
また、福岡市の都心部では「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」などの大規模な都市再開発が進み、都市の成長とともに不動産市場が活況ではあるが、それと同時に「成長痛」といわれる空室の増加や市場の変化にも対応していかなければならない。その時、コロナ禍で変わった市場への対応はもちろん、新規ビジネスの構築など、取り組むべき課題への人的リソースの確保にも不動産テックが力を発揮するのは間違いない。
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